居抜き譲渡、事業譲渡、株式譲渡では、引き継ぐ資産、契約、債務の範囲が異なります。飲食店オーナーが選択肢を比較するための基本論点を整理します。
取引の名前より、何を渡すかを決める
居抜きは、内装や厨房設備を残した状態の物件を指す場面で使われます。その言葉だけでは、屋号、レシピ、従業員、予約、取引先まで譲る契約かどうかは分かりません。事業譲渡では、合意した事業と対象資産・契約を具体化します。株式譲渡では会社の株主が変わるため、会社が持つ契約や負担の全体を調べることが重要になります。
比較表には、造作、設備、在庫、敷金、商標、顧客情報、従業員、借入、未払費用を並べます。各項目を「渡す」「残す」「相手や関係者へ確認中」に分けてください。法人のお店でも、設備はオーナー個人が所有していることがあります。資産の名義と契約当事者を確認し、譲渡会社が持っていないものを対象に含めないようにします。
関係者の確認を、スキーム別に並べる
賃貸店舗では、物件契約を買い手へつなげられるかを貸主等と確認します。株主が変わる取引でも、支配権の変更に関する条項があるかを読みます。設備リース、フランチャイズ、決済サービスなども契約ごとの確認が必要です。全ての契約が同じ方法で引き継がれると考えず、変更手続き、通知、承諾、再契約の要否を一覧にしてください。
事業譲渡で労働契約を移す場合には、対象となる従業員の個別の承諾を確認する必要があります。食品営業の許可・届出には事業譲渡に伴う承継制度がありますが、対象となる営業や施設の変更内容によって手続きが異なります。スキームを選ぶ前に、従業員への説明、保健所への相談、税務の確認に使える日程を確保します。
個店の譲渡で、三つの案を比較する
仮定の例として、法人が一店舗を経営し、オーナー個人の設備を店内で使っている場合を考えます。内装・設備だけを譲る案、屋号・レシピ等を含む事業を譲る案、会社の株式を譲る案では、対象一覧と調査範囲が異なります。どの案でも、個人所有設備の扱い、物件を使い続ける条件、営業開始日を揃えなければ比較できません。
選択のためには、会社の財務資料、資産台帳、物件契約、許可証、従業員一覧を用意します。手続きが少なく見える案を先に決めるより、残したい資産や事業、引退後に残る責任を確かめてください。税負担や契約上の結論は個別事情で変わるため、税理士や弁護士等と確認し、費用と営業継続の両方から判断します。
制度の確認資料:厚生労働省「事業譲渡等指針」現行全文、厚生労働省「食品営業の事業譲渡に伴う地位承継」案内。個別の手続きは所管窓口・専門家へ確認してください。

